対岸、雪投沢の雪渓 |
明け方まで、風が吹いた。
ハイマツの中の窪地に張ったテントも、
結構揺れました。
甲府方面の展望を期待して、
テントから出てみた。
残念ながら雲が遮っていた。
今日は、広河内岳に登った後、
池ノ沢を、大井川本流出会いにある
小屋まで下る予定だ。
朝食を軽く済まし、
濡れたテントをたたんだら出発する。
対岸に雪投沢が見えてきた。
初日、Nさんから『雪投は雪渓が残っていた』
と聞いていたので確認する。
勾配の急な場所に、
ふちがギザギザな雪渓が二つ見えた。 |
天候も怪しいので、雪投沢を塩見岳に上がり、三伏沢を下る計画は中止とした。
農鳥小屋や熊ノ平小屋に寄りたいなと思ったけど、
残りの日数の関係もあり、池ノ沢小屋から東俣を下る事にした。
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広河内岳 |
甲府方面
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目の前に『目指す頂』を見ながら登るのは、一向に捗らない感じがして辛いものがある。
気を紛らわす様に、横やら下やらを見ながら歩く。
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ハイマツのコブ |
池ノ沢の切込み |
そのうちに、ガスが上がってきた。
風も吹き、結構寒い。
カッパを着て、トボトボ歩く。
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少しずつ近づいてる??? |
広河内手前、いくつかのコブを越えて |
時々ガスが晴れると、広河内が現れる。
さっき見た時よりも近づいてるかな?
・・・・・。
あまり変わり映えしない(爆)
ハイマツの尾根歩きを、純粋に楽しむとしよう。
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雷 鳥 |
稜線から見下ろす池ノ沢源頭 |
鳥が鳴いた。
前を見ると、脚に白羽根のアクセントのある雷鳥がいた。
白根南領の雷鳥を初めて見た。
周りの岩と同じ色をしていて、鳴かなければ気付かなかったかもしれない。
岩の上に黒っぽいものが乗っていたので、良く見てみたらナメクジだった。
寒いせいか?
動きが緩慢・・・というか、動かない。
暫く見ていたけど、全然動かなかった。
ナメクジが乗っている岩の下には、黄色いキノコが生え、
そのキノコを別のナメクジが食べていた。
と言うか、食べた跡はあるんだけど、このナメクジも動かなかった。
こんな過酷な場所に、ナメクジがいる事自体が不思議だった。
ナメクジを見てすぐ、広河内岳山頂に到着した。
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キノコを食べるナメクジ/山頂直下 |
広河内岳山頂 |
山頂は、ガスにより展望無し。
ガスと言うよりも、霧雨状態。
眼鏡のレンズをふいても、すぐに水滴で見えなくなる。
そして、横からの強い風。
写真を撮ったら、早々に下りにかかる。
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池ノ沢源頭 |
池ノ沢源頭 |
3年振りの池ノ沢の下り。
先の様子は分かっているので気は楽だけど、慎重に速やかに下っていく。
前回もそうだったが、無音の空間に鳥の泣き声がよく響く。
山の中腹で鳴く『1羽1羽の鳥の鳴き声』がよく聞こえる、幻想的で不思議な空間だ。
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池ノ沢源頭 |
池ノ沢水源 |
ガレとハイマツの境界を歩いて行くと、潅木と草が茂る場所に出た。
前回は、すぐに滑って歩きづらかった場所だ。
間もなく水音が聞こえてくる。
緑のジュウタンの下に、
ゴルフボール〜ソフトボール大の石が、隙間を保ったまま敷き詰められ、
その石の下の隙間を水が流れている。
隙間があるので、水音が不思議な響き方をしている。
自然の神秘だ。
甘露で喉を潤したら、再び出発する。
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苔蒸した石の間を流れる |
水の流れは一旦消えるが、
暫く下ると苔むした沢形に、流れが表れる。
流れは段々と太くなるが、
いつしか伏流してしまう。
荒れた流れの跡を、草を踏んだり
木を跨いだりして進んでいくと、
南アルプスの瞳『池ノ沢池』の
湖畔に導かれる。
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静かな静かな自然湖。
池の左岸に流れ込みがあり、
そこで、フルーツや冷たい茶蕎麦をいただき一息つく。
休憩中、一瞬日が差した気がしたが気のせいか?
コーヒーも入れ、大休止を取ったら出発する。
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池ノ沢池へ注ぐ沢 |
池ノ沢池 |
池の右岸をぐるりと回り、池の下流端から山肌の登山道を行く。
所々崩壊し、不明瞭な所も多いが、探せば道は必ずあります。
『今回こそは滑らない様に』気をつけて歩いたが、
これだけ慎重に歩いても、また滑ってしまった。
斜面に積もった、湿った枯葉や木の枯枝で滑り、
再び右膝をいためてしまった。
また、岩の上に乗ったら、
岩が動き出し、ゴロンゴロンと転がり落ちていった。
油断は禁物である。
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滝 |
池ノ沢右岸の道 |
池ノ沢小屋間近の右岸から、水量のある支沢が差している。
テープに導かれて支沢に入ると、
かつて、池ノ沢小屋へ水を引いていたのであろう黒いホースが延びていた。
ホースのある辺りから、明確な踏み跡が『池ノ沢小屋裏方向』に向かって延びている。
水場と小屋を往復する踏み跡だろうか?
辿ってみると、踏み跡はスイッチバックしながら
小屋とは方角が違う山の上の方へと導いていった。
行き止まりはすぐだった。
付近の木の幹が、大方白く剥がれている異様な光景だった。
『これは、道じゃあない』と気付き、踵をかえして池ノ沢に戻る。
そのまま沢伝いに大井川東俣出会いまで行き、
無人の池ノ沢小屋の出入り口を開けた。
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池ノ沢小屋 |
大井川東俣 |
誰も居ない、静かな小屋に荷物をおろし、
付近の散策に出掛ける。
河原の砂地を見ると、人の足跡の中に熊のものも結構ある。
7月には、釣り人が広河原小屋に泊まろうと思ったら
小屋の中に熊がいたらしい。
で、やむなく少し離れた河原で寝たとか・・・・。
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池ノ沢出合いの東俣・遠く蝉ガレ |
熊の足跡 |
夜
池ノ沢小屋には、ネズミが住んでいる。
シュラフに潜って暗くすると、荷物の辺りで・・・ガサガサゴソゴソ!
ラジオは、明後日の梅雨明けを前に、
前線北上に伴い大雨が降ることを告げている。
『・・・前線が北上・・・・・東海地方で・・・所により100ミリの雨が・・・』
私はたまげた。
ここは、大増水すると停滞するしかないのだ。
6〜7年前は、しとしとダラダラと雨が降る中、異変を察して
道のある広河原までなんとか下った。
その時は、翌朝、豹変した流れを見て『無理して下って良かった』とホッとした。
その時の事を思い出し、少し心配になった。
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日が変わる頃、ボツリボツリと『大粒の雨』が屋根を叩き始めた。
池ノ沢小屋は樹林の中に建っているので、屋根を叩くのは葉に湛えられ滴った雨粒。
聞こえる流れの音も相俟って、雨音を大袈裟に聞かせているのだと承知していた。
しかし、間もなく、絶え間無く雨音が聞こえるようになった。
トタン屋根が、雨音を大袈裟に聞かせているのだと自分に言い聞かせたが、
去年の横窪小屋の状況に似ている気がする。
益々勢いが増す雨に、『広河原まで下っておけば良かったなぁ』と後悔した。
5Wの無線を持って来たけど、全然感度が無い。
停滞はヘッチャラだけど、無断で仕事を休むのは困る。
明日は、大した増水で無ければいいけどなぁ。
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