平成15年7月 転付峠〜広河内岳 【三日目】
 

対岸、雪投沢の雪渓
  
明け方まで、風が吹いた。
ハイマツの中の窪地に張ったテントも、
結構揺れました。
  
甲府方面の展望を期待して、
テントから出てみた。
残念ながら雲が遮っていた。
  
今日は、広河内岳に登った後、
池ノ沢を、大井川本流出会いにある
小屋まで下る予定だ。
   
朝食を軽く済まし、
濡れたテントをたたんだら出発する。
  
対岸に雪投沢が見えてきた。
初日、Nさんから『雪投は雪渓が残っていた』
と聞いていたので確認する。
 
勾配の急な場所に、
ふちがギザギザな雪渓が二つ見えた。
 
天候も怪しいので、雪投沢を塩見岳に上がり、三伏沢を下る計画は中止とした。
農鳥小屋や熊ノ平小屋に寄りたいなと思ったけど、
残りの日数の関係もあり、池ノ沢小屋から東俣を下る事にした。
  
 
広河内岳

甲府方面
 
目の前に『目指す頂』を見ながら登るのは、一向に捗らない感じがして辛いものがある。
気を紛らわす様に、横やら下やらを見ながら歩く。
     

ハイマツのコブ

池ノ沢の切込み
 
そのうちに、ガスが上がってきた。
風も吹き、結構寒い。
カッパを着て、トボトボ歩く。
  

少しずつ近づいてる???

広河内手前、いくつかのコブを越えて
 
時々ガスが晴れると、広河内が現れる。
さっき見た時よりも近づいてるかな?
・・・・・。
あまり変わり映えしない(爆)
 ハイマツの尾根歩きを、純粋に楽しむとしよう。
 

雷 鳥

稜線から見下ろす池ノ沢源頭
 
鳥が鳴いた。
前を見ると、脚に白羽根のアクセントのある雷鳥がいた。
白根南領の雷鳥を初めて見た。
周りの岩と同じ色をしていて、鳴かなければ気付かなかったかもしれない。
 
岩の上に黒っぽいものが乗っていたので、良く見てみたらナメクジだった。
寒いせいか?
動きが緩慢・・・というか、動かない。
暫く見ていたけど、全然動かなかった。
 
ナメクジが乗っている岩の下には、黄色いキノコが生え、
そのキノコを別のナメクジが食べていた。
と言うか、食べた跡はあるんだけど、このナメクジも動かなかった。
こんな過酷な場所に、ナメクジがいる事自体が不思議だった。
ナメクジを見てすぐ、広河内岳山頂に到着した。
 

キノコを食べるナメクジ/山頂直下

広河内岳山頂
 
山頂は、ガスにより展望無し。
ガスと言うよりも、霧雨状態。
眼鏡のレンズをふいても、すぐに水滴で見えなくなる。
そして、横からの強い風。
 
写真を撮ったら、早々に下りにかかる。
 

池ノ沢源頭

池ノ沢源頭
 
3年振りの池ノ沢の下り。
先の様子は分かっているので気は楽だけど、慎重に速やかに下っていく。
前回もそうだったが、無音の空間に鳥の泣き声がよく響く。
山の中腹で鳴く『1羽1羽の鳥の鳴き声』がよく聞こえる、幻想的で不思議な空間だ。
 

池ノ沢源頭

池ノ沢水源
 
ガレとハイマツの境界を歩いて行くと、潅木と草が茂る場所に出た。
前回は、すぐに滑って歩きづらかった場所だ。
 
間もなく水音が聞こえてくる。
緑のジュウタンの下に、
ゴルフボール〜ソフトボール大の石が、隙間を保ったまま敷き詰められ、
その石の下の隙間を水が流れている。
隙間があるので、水音が不思議な響き方をしている。
自然の神秘だ。
 
甘露で喉を潤したら、再び出発する。
 

苔蒸した石の間を流れる
 
水の流れは一旦消えるが、
暫く下ると苔むした沢形に、流れが表れる。
 
流れは段々と太くなるが、
いつしか伏流してしまう。
 
荒れた流れの跡を、草を踏んだり
木を跨いだりして進んでいくと、
南アルプスの瞳『池ノ沢池』の
湖畔に導かれる。
 
 
静かな静かな自然湖。
池の左岸に流れ込みがあり、
そこで、フルーツや冷たい茶蕎麦をいただき一息つく。
休憩中、一瞬日が差した気がしたが気のせいか?
 
コーヒーも入れ、大休止を取ったら出発する。
  

池ノ沢池へ注ぐ沢

池ノ沢池
 
池の右岸をぐるりと回り、池の下流端から山肌の登山道を行く。
所々崩壊し、不明瞭な所も多いが、探せば道は必ずあります。
 
『今回こそは滑らない様に』気をつけて歩いたが、
これだけ慎重に歩いても、また滑ってしまった。
斜面に積もった、湿った枯葉や木の枯枝で滑り、
再び右膝をいためてしまった。
   
また、岩の上に乗ったら、
岩が動き出し、ゴロンゴロンと転がり落ちていった。
  
油断は禁物である。
 


池ノ沢右岸の道
 
池ノ沢小屋間近の右岸から、水量のある支沢が差している。
テープに導かれて支沢に入ると、
かつて、池ノ沢小屋へ水を引いていたのであろう黒いホースが延びていた。
 
ホースのある辺りから、明確な踏み跡が『池ノ沢小屋裏方向』に向かって延びている。
水場と小屋を往復する踏み跡だろうか?
辿ってみると、踏み跡はスイッチバックしながら
小屋とは方角が違う山の上の方へと導いていった。
 
行き止まりはすぐだった。
付近の木の幹が、大方白く剥がれている異様な光景だった。
 
『これは、道じゃあない』と気付き、踵をかえして池ノ沢に戻る。
そのまま沢伝いに大井川東俣出会いまで行き、
無人の池ノ沢小屋の出入り口を開けた。

池ノ沢小屋

大井川東俣
 
誰も居ない、静かな小屋に荷物をおろし、
付近の散策に出掛ける。
 
河原の砂地を見ると、人の足跡の中に熊のものも結構ある。
7月には、釣り人が広河原小屋に泊まろうと思ったら
小屋の中に熊がいたらしい。
で、やむなく少し離れた河原で寝たとか・・・・。
  

池ノ沢出合いの東俣・遠く蝉ガレ

熊の足跡
 

 
池ノ沢小屋には、ネズミが住んでいる。
シュラフに潜って暗くすると、荷物の辺りで・・・ガサガサゴソゴソ!
  
ラジオは、明後日の梅雨明けを前に、
前線北上に伴い大雨が降ることを告げている。
『・・・前線が北上・・・・・東海地方で・・・所により100ミリの雨が・・・』
  
私はたまげた。
ここは、大増水すると停滞するしかないのだ。
 
6〜7年前は、しとしとダラダラと雨が降る中、異変を察して
道のある広河原までなんとか下った。
その時は、翌朝、豹変した流れを見て『無理して下って良かった』とホッとした。
その時の事を思い出し、少し心配になった。



日が変わる頃、ボツリボツリと『大粒の雨』が屋根を叩き始めた。
池ノ沢小屋は樹林の中に建っているので、屋根を叩くのは葉に湛えられ滴った雨粒。
聞こえる流れの音も相俟って、雨音を大袈裟に聞かせているのだと承知していた。
 
しかし、間もなく、絶え間無く雨音が聞こえるようになった。
トタン屋根が、雨音を大袈裟に聞かせているのだと自分に言い聞かせたが、
去年の横窪小屋の状況に似ている気がする。
 
益々勢いが増す雨に、『広河原まで下っておけば良かったなぁ』と後悔した。
5Wの無線を持って来たけど、全然感度が無い。
 
停滞はヘッチャラだけど、無断で仕事を休むのは困る。
明日は、大した増水で無ければいいけどなぁ。
 
 

TOP  四日目
 

 
 

 
 
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送