平成15年7月 転付峠〜広河内岳 【一日目】
 
 
昨秋以降、捻挫した膝・足首の調子が悪かった。
今年は、春以降も歩かず養生養生。
  
今年最初の山歩きは、南アルプスの白根南領。
初めて買ったテントを使うのも楽しみだ。

出発前夜、子どもがザックの重さを聞くので、
計ってみたらゲンナリしてしまった。
これに昼飯を追加し、峠上で水も追加した。
 
遥か振りの重荷に
『大丈夫かしらん?』と心配になる。。。

井川神社/二軒小屋
 
 
数日前、出発日の天気予報は晴れだった。
しかし、入山日が近づくにつれ、予報の雲行きが怪しくなる。
 
中止にしようか迷ったけど、とりあえず曇りなので二軒小屋を出発する。
 
 
 

熊剥ぎ
  

銀竜草
 
転付峠への登り道は、ジグザグに高度を上げていく。
樹林帯をゆっくり上がって行くと、ポツリポツリと雨滴が落ちてきた。
 
この先の天気が気になって、どうにも気が乗らない。
雨だと、気持ちまで湿気ってしまうようだ。
  


ジグザグ
 
高度を上げるにつれ、ガスが濃くなっていく。
そのうち森の中にまで立ち込めるようになり、
冷え冷えとして一層気分が滅入る。
  

ガスが上がってきた

稜線の休憩所
 
半歩半歩踏みしめて行くと、周りに笹薮が目立つようになる。
平らになったら、ベンチのある休憩所に差しかかった。
休憩所では休まず、笹の中の登山道を行く。
 
あまりの静けさに、獣の鳴き真似をしながら、カサカサと笹を分け進むと、
突然、目の前に作業道跡(*)が現れた。
そこには、男性が一人おり、驚愕の顔でこっちを見ていた。
その顔を見て、私も驚いた。
   
挨拶しつつ近づけば、『今日は千枚小屋まで行く』と言う。
健脚ですなぁ♪
水場について尋ねると、
『田代側に5分も下れば、滝の様に流れてますよ。アッハッハ♪』
と教えてくれた。
    
(*)  今は放置され、車は通行できないが、二軒小屋の南から山肌を上がり、
転付峠付近の稜線を通って奈良田越えから大井川・東俣へと下っていく道。

 

笹中の登山道

稜線上の作業道跡(跡)
 
作業道跡を北へ歩くと、すぐに田代への下り分岐。
ここが転付峠だ。
 
ザックを降ろし、田代側へ下る事5分。
滝の様に流れる水場から水を汲んだ。
登り返してザックを背負い、奈良田越えまでは作業道跡を行く。
 

田代への下り口

落石もあり使用に耐えない作業道
 
前の日の午後、下界では雷が鳴った。
山では、一度雷がなると、翌日以降も数日間は雷が鳴ると言われている。
『昨日は山でも雷が鳴ったのかな?大丈夫かな??』
 
そんな事を思いながら、ヘロヘロと歩いて行った。
 
蝙蝠尾根や悪沢岳等の展望を楽しみにしていたけど、白くガスがかかって見えない。
蛇眼沢源頭を確認したりしながら、淡々と歩いていく。
  

蛇眼沢源頭付近

大井川対岸の山肌
 
チリーンチリーン♪
奈良田越え近くで、後ろから熊追いの音が聞こえてきた。
音の主は、一人のおじさん。
田代から歩いて来て、笹山を目指すという。
  

大井川東俣

奈良田越付近の広場
 
間もなく奈良田越え。
 
作業道は二つに分かれ、下って行く道を横目に右側の直進を行く。
草薮を分け分け行くと、すぐに広い場所に出た。
おじさんはここで泊まり、明日、笹山をピストンするという。
明日再会しそうだけど、とりあえず別れを告げて先へ進む。
 
やや戻る様に踏跡を進むと、「コンクリートの土台」のある場所に着いた。
ここから北へと進路を取り、藪の尾根上を進む。
 

コンクリートの土台(ここから樹林の中に分け入る)

尾根上
 
密生した枝葉に、引っ掛かったり掻き分けたりしつつ進んでいく。
露が凄く、服もザックもすぐにビショ濡れになってしまった。
 
藪がひどい区間を抜けると、ワイヤーが土に埋もれ、
朽ちかけた小屋が建っていた。
  

ベニテングダケ

鈴なりのキノコ
 
段と緩やかな登りが続く。
左前方の木立の向こうから、『ガサガサガサ・・・』と藪を分け進む大きな音がした。
音の主は分からなかった。
 
踏み跡の先を見ると、脇に美しい朱色が映えていた。
近づくと、顔を出して間が無いベニテングダケだった。
 

白剥山々頂

白剥山の三角点
 
背中の荷物にヘロヘロになりながら、どうにかこうにか白剥山に到着した。
山名の由来について、『樹林の山肌が、その辺りだけ剥げているのかな?』と想像していたが、
山頂はうっそうとした樹林の中である。
 
山頂付近では、どの樹の皮も白く剥かれているのが目に付いた。
熊による皮剥ぎ、『熊剥ぎ』である。
この辺りに、山名の由来がありそうな気がした。
  
先に行こうか迷ったが、無理せずここに泊まる事にした。
  

明日行く先は藪の中

大井川東俣の切れ込み
 
テントを設営したら、中に入って晩ごはん。
コンロに火を着けようかと思ったら、ライターが着火しない。
予備のライターも火が着かなかった。
 
100円ショップで買い求めた使い捨てのターボライターだけど、
気圧の関係か? 標高が高い場所では火が着かないらしい。
家で試した時には、どちらも着火したのに。
 
もう火種が無いので、『仕方が無いや』と冷たく硬いパックの赤飯にかぶりついた。
半分程かじった所で、テントの北側から藪をかき分ける音が聞こえてきた。
 
『グハーッ!グハッ!』と獣の荒荒しい息遣いがテントに近づいて来た。
『とうとう熊が出たか。』と、神経をテント外に向けつつ赤飯をモグモグしていると、
『グハーッ。こっちだよー!』と聞こえ、人だと分かってホッとした。
 
テントのファスナーを明けて外をのぞき、『こんにちはー』とあいさつすると、
その人は、藪山歩きの達人Nさんだった。
意外な所での再会に驚いていると、すぐに仲間の皆さんが追いついてきた。
 
時計を見て、当然の様に『今日は、ここで泊まりですか?』と聞くと、
『いいえ、二軒小屋に下りますよ。』と言う。
今日で下山すると聞き、図々しくも、
『予備のライターがあったら、使わせていただけませんか』とお願いすると、
貴重な1個を分けていただけた。
 
このライターは、ありがたく使わせていただくと共に、
自分への戒めとして、いつまでも大切に持っている事とした。
Nさん、ありがとうございました。

 

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