昨秋以降、捻挫した膝・足首の調子が悪かった。 今年は、春以降も歩かず養生養生。 今年最初の山歩きは、南アルプスの白根南領。 初めて買ったテントを使うのも楽しみだ。 出発前夜、子どもがザックの重さを聞くので、 計ってみたらゲンナリしてしまった。 これに昼飯を追加し、峠上で水も追加した。 遥か振りの重荷に 『大丈夫かしらん?』と心配になる。。。 |
井川神社/二軒小屋 |
数日前、出発日の天気予報は晴れだった。 しかし、入山日が近づくにつれ、予報の雲行きが怪しくなる。 中止にしようか迷ったけど、とりあえず曇りなので二軒小屋を出発する。 |
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熊剥ぎ |
銀竜草 |
転付峠への登り道は、ジグザグに高度を上げていく。 樹林帯をゆっくり上がって行くと、ポツリポツリと雨滴が落ちてきた。 この先の天気が気になって、どうにも気が乗らない。 雨だと、気持ちまで湿気ってしまうようだ。 |
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樹 |
ジグザグ |
高度を上げるにつれ、ガスが濃くなっていく。 そのうち森の中にまで立ち込めるようになり、 冷え冷えとして一層気分が滅入る。 |
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ガスが上がってきた |
稜線の休憩所 |
半歩半歩踏みしめて行くと、周りに笹薮が目立つようになる。 平らになったら、ベンチのある休憩所に差しかかった。 休憩所では休まず、笹の中の登山道を行く。 あまりの静けさに、獣の鳴き真似をしながら、カサカサと笹を分け進むと、 突然、目の前に作業道跡(*)が現れた。 そこには、男性が一人おり、驚愕の顔でこっちを見ていた。 その顔を見て、私も驚いた。 挨拶しつつ近づけば、『今日は千枚小屋まで行く』と言う。 健脚ですなぁ♪ 水場について尋ねると、 『田代側に5分も下れば、滝の様に流れてますよ。アッハッハ♪』 と教えてくれた。 (*) 今は放置され、車は通行できないが、二軒小屋の南から山肌を上がり、 転付峠付近の稜線を通って奈良田越えから大井川・東俣へと下っていく道。 |
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笹中の登山道 |
稜線上の作業道跡(跡) |
作業道跡を北へ歩くと、すぐに田代への下り分岐。 ここが転付峠だ。 ザックを降ろし、田代側へ下る事5分。 滝の様に流れる水場から水を汲んだ。 登り返してザックを背負い、奈良田越えまでは作業道跡を行く。 |
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田代への下り口 |
落石もあり使用に耐えない作業道 |
前の日の午後、下界では雷が鳴った。 山では、一度雷がなると、翌日以降も数日間は雷が鳴ると言われている。 『昨日は山でも雷が鳴ったのかな?大丈夫かな??』 そんな事を思いながら、ヘロヘロと歩いて行った。 蝙蝠尾根や悪沢岳等の展望を楽しみにしていたけど、白くガスがかかって見えない。 蛇眼沢源頭を確認したりしながら、淡々と歩いていく。 |
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蛇眼沢源頭付近 |
大井川対岸の山肌 |
チリーンチリーン♪ 奈良田越え近くで、後ろから熊追いの音が聞こえてきた。 音の主は、一人のおじさん。 田代から歩いて来て、笹山を目指すという。 |
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大井川東俣 |
奈良田越付近の広場 |
間もなく奈良田越え。 作業道は二つに分かれ、下って行く道を横目に右側の直進を行く。 草薮を分け分け行くと、すぐに広い場所に出た。 おじさんはここで泊まり、明日、笹山をピストンするという。 明日再会しそうだけど、とりあえず別れを告げて先へ進む。 やや戻る様に踏跡を進むと、「コンクリートの土台」のある場所に着いた。 ここから北へと進路を取り、藪の尾根上を進む。 |
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コンクリートの土台(ここから樹林の中に分け入る) |
尾根上 |
密生した枝葉に、引っ掛かったり掻き分けたりしつつ進んでいく。 露が凄く、服もザックもすぐにビショ濡れになってしまった。 藪がひどい区間を抜けると、ワイヤーが土に埋もれ、 朽ちかけた小屋が建っていた。 |
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ベニテングダケ |
鈴なりのキノコ |
段と緩やかな登りが続く。 左前方の木立の向こうから、『ガサガサガサ・・・』と藪を分け進む大きな音がした。 音の主は分からなかった。 踏み跡の先を見ると、脇に美しい朱色が映えていた。 近づくと、顔を出して間が無いベニテングダケだった。 |
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白剥山々頂 |
白剥山の三角点 |
背中の荷物にヘロヘロになりながら、どうにかこうにか白剥山に到着した。 山名の由来について、『樹林の山肌が、その辺りだけ剥げているのかな?』と想像していたが、 山頂はうっそうとした樹林の中である。 山頂付近では、どの樹の皮も白く剥かれているのが目に付いた。 熊による皮剥ぎ、『熊剥ぎ』である。 この辺りに、山名の由来がありそうな気がした。 先に行こうか迷ったが、無理せずここに泊まる事にした。 |
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明日行く先は藪の中 |
大井川東俣の切れ込み |
テントを設営したら、中に入って晩ごはん。 コンロに火を着けようかと思ったら、ライターが着火しない。 予備のライターも火が着かなかった。 100円ショップで買い求めた使い捨てのターボライターだけど、 気圧の関係か? 標高が高い場所では火が着かないらしい。 家で試した時には、どちらも着火したのに。 もう火種が無いので、『仕方が無いや』と冷たく硬いパックの赤飯にかぶりついた。 半分程かじった所で、テントの北側から藪をかき分ける音が聞こえてきた。 『グハーッ!グハッ!』と獣の荒荒しい息遣いがテントに近づいて来た。 『とうとう熊が出たか。』と、神経をテント外に向けつつ赤飯をモグモグしていると、 『グハーッ。こっちだよー!』と聞こえ、人だと分かってホッとした。 テントのファスナーを明けて外をのぞき、『こんにちはー』とあいさつすると、 その人は、藪山歩きの達人Nさんだった。 意外な所での再会に驚いていると、すぐに仲間の皆さんが追いついてきた。 時計を見て、当然の様に『今日は、ここで泊まりですか?』と聞くと、 『いいえ、二軒小屋に下りますよ。』と言う。 今日で下山すると聞き、図々しくも、 『予備のライターがあったら、使わせていただけませんか』とお願いすると、 貴重な1個を分けていただけた。 このライターは、ありがたく使わせていただくと共に、 自分への戒めとして、いつまでも大切に持っている事とした。 Nさん、ありがとうございました。 |
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