うーん♪
シュラフの中で伸びをする。
辺りは未だ薄暗く、見上げれば星が瞬いている。
寒いので「シュラフに入ったまま」手をのばし、
昨夜、「水の入ったコッフェル」を載せておいたコンロに火を着ける。
しばらくゴロゴロしていたが、いつまでも寝ているわけにはいかないので、
意を決してシュラフから飛び出す。
寒いので、朝食は「野菜・海苔・トロロ昆布など」を放り込んだラーメン。
たいらげる頃には体も暖まり、急いで寝床を撤収する。
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黄蓮沢の滝 |
鉄 砲 |
出発する頃には、すっかり夜が明けて明るくなる。
黄蓮沢の滝を撮影後、木材流送に使った鉄砲(堰)跡を越えて内無沢を上がっていく。
沢の流れは細くなるが、しばらく行くと淵が点在するようになる。
最後の大淵を越えると水量がグッと減り、沢は「荒れた渓相」となる。
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稜線が近くなってきた |
内無沢 |
辺りの「山の雰囲気」が変わってきた。
だいぶ「奥深い場所まで来たなぁ」と実感する。
そのうち、沢が二俣になる。
左の方が水量が多いけど「進むべき沢は右」と何度も地形図で確認する。
チョコボールをバリボリ食べ過ぎて喉が乾く(笑)
水分を摂り、急勾配の沢を這い上がっていく。
まだかなぁ? そろそろだよなぁ?
そう思っていると高山裏の水場に到着した。
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苔むした沢を上がる |
高山裏の水場 |
水場でたっぷりと水をくみ、一休みしたら縦走路まで沢を詰め上がる。
沢の源頭は黄色いお花畑、トレースを辿っていくと高山裏キャンプ指定地に導かれた。
そこは既に稜線。
お花畑の向こうには、ただ信州の空が広がっていた。
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源頭お花畑 |
高山裏避難小屋 |
縦走路を荒川岳方面へ進む。
しらびその林の中をトボトボと歩いて行く。
木の間から「高山裏避難小屋」が見える。
更に歩くと「中央アルプス」や、「小河内岳」の稜線上に避難小屋が望めた。
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伊奈谷・中央アルプス |
小河内岳・小河内岳避難小屋 |
小さなアップダウンが続く、歩き易い道。
キョロキョロしながら歩いているので、あまりはかどらない。
段々と、上り勾配がきつくなってきた。
低木帯を抜け出ると、ガラガラの瓦礫の斜面に出た。
荒川前岳手前のカール地形の中の登りだ。
「ここを登るのか〜」と苦笑いしながら見上げる。
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塩見岳 |
荒川前岳手前の登山道 |
疲れたくないので「5歩歩いては5回呼吸」を繰り返して上がっていく。
グングンと展望が広がる。
下って来る人はあっても、登って行く人がいない。
ゆっくりのんびり上がっていくと、登り坂が終わり「荒川大崩落」の縁に出た。
小渋川の方から、上昇気流に乗って1匹の蝶が上がって来た。
羽は羽ばたく事無く広げたままで、ゆらゆらとバランスをとり、
3000mの尾根を越えて、なおも高く舞い上がり、遥か上空へと消えていった。
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崩落の縁から小渋川方面を望む |
崩落越しに見る大聖寺平 |
荒川岳とは、前岳・中岳・東岳(悪沢岳)の三山の総称。
まずは、標高3068mの荒川前岳へ辿りつく。
山頂のすぐ横まで大崩落が来ており、えらく恐ろしい山頂である。
その少し先の「縦走路分岐?」にザックを置き、水筒とカメラを持って悪沢岳をピストンする。
実は、この時ザックを置いた場所は「縦走路分岐」ではなかった。
その後、本当の分岐が現れて、分岐よりも手前に置いてしまった事に気付く(失敗)
ま、この時はそんな事は知らないので鼻歌交じりで出発する♪
すぐに標高3083mの荒川中岳に到着する。
山頂近くに建っている避難小屋の脇を通り抜け、悪沢岳手前のコルを目指して下る。
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荒川中岳 |
中岳避難小屋 |
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途中の斜面には「お花畑」が広がり、
道の脇には、多くの種類の花が咲いている。
辿りついたコルから見上げる、悪沢岳の大きい事よ。
「こりゃ疲れそうだ」と思いつつ、急斜面の上りにかかる。
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鳥 |
悪沢岳 |
なかなか現れない頂上には参った。
辺りに赤い岩が目立つようになると、標高3141m・悪沢岳山頂に辿り着いた。
悪沢岳。。。
一般的に、「悪」と云う字はマイナスの印象を与えるので敬遠されがちだけど、
私の中では、この山の場合、高さ・展望・大きく堂々とした山容のイメージが先行し、
「悪沢岳」という名前が、更にそれらのイメージを膨らませているといった感じだ。
その所為か、この名前からはマイナスのイメージは受けず「雄々しい」感じを受ける。
悪沢岳は荒川岳(荒川三山)の内の一つであり、「東岳」という名前も付いているけど、
三山の内の一つでありながら、この山だけは独立した峰であり「和して同せず」といった強かさに好感を持つ。
何にしても憧れの山「悪沢岳」の山頂まで来れた。
よかったよかった。
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丸 山 |
目の前の3000m峰「丸山」の大らかさに見とれ、間ノ岳方面に目をやった。
視界の左から右へ、スラーッと蝙蝠尾根が延びている。
美しい尾根に見とれながら「いつか歩いてみたいな」と思った。
たまたま山頂に居たオジサンにクッキーをいただく。
水筒にわずかに残っていた水を飲み干す。
1Lもあれば充分だと思っていたら見込みが甘かった。
オジサンの安全山行を願い、踵を返す。
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蝙蝠尾根 |
コルに向かってひたすら下る。
すると、中岳への登り返しで極端にペースダウン。
迷わず中岳の避難小屋に立寄り、キリンレモンを所望する。
意外や、山で飲む炭酸水は美味しい♪
下界では、滅多に口にしないのにね。
ザックの所まで戻ったら、横になって一休み。
その後、再び縦走路分岐点まで戻り、
そこからは、赤石岳方面に進み、荒川小屋を目指してカールを一気に下る。
素晴らしいお花畑が広がっているけど、見る時間が無い。
見る時間が無いけど、ついつい見てしまう♪(どっちやねん)
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荒川岳カールのお花畑 |
途中タップリと水をくみ、夕方には営業中の荒川小屋に着いた。
屋外テーブルでレトルトのカレーライスをツマミにビールをやっていると、
一人で歩いて来たと云う親父さんが地図を広げて話しかけてきた。
小屋の中では、とある中高年の男女グループが我が家のような傍若無人振りで、
私も、他の「大方の良識ある中高年の皆さん」も迷惑を被った。
その夜は・・・
私の、高らかなヨーデル・イビキとダイナミックな寝返りに、
件のグループの皆さんも、小さくなって寝ておられたようだ。
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