平成14年7月 荒川三山〜赤石岳 【二日目】
 
  
うーん♪
シュラフの中で伸びをする。
 
辺りは未だ薄暗く、見上げれば星が瞬いている。
寒いので「シュラフに入ったまま」手をのばし、
昨夜、「水の入ったコッフェル」を載せておいたコンロに火を着ける。
しばらくゴロゴロしていたが、いつまでも寝ているわけにはいかないので、
意を決してシュラフから飛び出す。
 
寒いので、朝食は「野菜・海苔・トロロ昆布など」を放り込んだラーメン。
たいらげる頃には体も暖まり、急いで寝床を撤収する。
  
黄蓮沢の滝
黄蓮沢の滝

鉄 砲
 
出発する頃には、すっかり夜が明けて明るくなる。
黄蓮沢の滝を撮影後、木材流送に使った鉄砲(堰)跡を越えて内無沢を上がっていく。

沢の流れは細くなるが、しばらく行くと淵が点在するようになる。
最後の大淵を越えると水量がグッと減り、沢は「荒れた渓相」となる。
 

稜線が近くなってきた

内無沢
 
辺りの「山の雰囲気」が変わってきた。
だいぶ「奥深い場所まで来たなぁ」と実感する。
 
そのうち、沢が二俣になる。
左の方が水量が多いけど「進むべき沢は右」と何度も地形図で確認する。
チョコボールをバリボリ食べ過ぎて喉が乾く(笑)
水分を摂り、急勾配の沢を這い上がっていく。
 
 まだかなぁ? そろそろだよなぁ?
そう思っていると高山裏の水場に到着した。
 
 

苔むした沢を上がる

高山裏の水場
 
水場でたっぷりと水をくみ、一休みしたら縦走路まで沢を詰め上がる。
沢の源頭は黄色いお花畑、トレースを辿っていくと高山裏キャンプ指定地に導かれた。

そこは既に稜線。
お花畑の向こうには、ただ信州の空が広がっていた。
  

源頭お花畑

高山裏避難小屋
 
縦走路を荒川岳方面へ進む。
しらびその林の中をトボトボと歩いて行く。

木の間から「高山裏避難小屋」が見える。
更に歩くと「中央アルプス」や、「小河内岳」の稜線上に避難小屋が望めた。
  
 

伊奈谷・中央アルプス

小河内岳・小河内岳避難小屋
 
小さなアップダウンが続く、歩き易い道。
キョロキョロしながら歩いているので、あまりはかどらない。
 
段々と、上り勾配がきつくなってきた。
低木帯を抜け出ると、ガラガラの瓦礫の斜面に出た。
荒川前岳手前のカール地形の中の登りだ。
「ここを登るのか〜」と苦笑いしながら見上げる。
 
 

塩見岳

荒川前岳手前の登山道
 
疲れたくないので「5歩歩いては5回呼吸」を繰り返して上がっていく。
グングンと展望が広がる。
下って来る人はあっても、登って行く人がいない。
 ゆっくりのんびり上がっていくと、登り坂が終わり「荒川大崩落」の縁に出た。

小渋川の方から、上昇気流に乗って1匹の蝶が上がって来た。
羽は羽ばたく事無く広げたままで、ゆらゆらとバランスをとり、
3000mの尾根を越えて、なおも高く舞い上がり、遥か上空へと消えていった。
  

崩落の縁から小渋川方面を望む

崩落越しに見る大聖寺平
 
荒川岳とは、前岳・中岳・東岳(悪沢岳)の三山の総称。
まずは、標高3068mの荒川前岳へ辿りつく。
山頂のすぐ横まで大崩落が来ており、えらく恐ろしい山頂である。
 
その少し先の「縦走路分岐?」にザックを置き、水筒とカメラを持って悪沢岳をピストンする。
実は、この時ザックを置いた場所は「縦走路分岐」ではなかった。
その後、本当の分岐が現れて、分岐よりも手前に置いてしまった事に気付く(失敗)

ま、この時はそんな事は知らないので鼻歌交じりで出発する♪
すぐに標高3083mの荒川中岳に到着する。
山頂近くに建っている避難小屋の脇を通り抜け、悪沢岳手前のコルを目指して下る。
 
 

荒川中岳

中岳避難小屋
 
途中の斜面には「お花畑」が広がり、
道の脇には、多くの種類の花が咲いている。

辿りついたコルから見上げる、悪沢岳の大きい事よ。
「こりゃ疲れそうだ」と思いつつ、急斜面の上りにかかる。
 


悪沢岳
 
なかなか現れない頂上には参った。
辺りに赤い岩が目立つようになると、標高3141m・悪沢岳山頂に辿り着いた。
 
悪沢岳。。。
 
一般的に、「悪」と云う字はマイナスの印象を与えるので敬遠されがちだけど、
私の中では、この山の場合、高さ・展望・大きく堂々とした山容のイメージが先行し、
「悪沢岳」という名前が、更にそれらのイメージを膨らませているといった感じだ。
その所為か、この名前からはマイナスのイメージは受けず「雄々しい」感じを受ける。
 
悪沢岳は荒川岳(荒川三山)の内の一つであり、「東岳」という名前も付いているけど、
三山の内の一つでありながら、この山だけは独立した峰であり「和して同せず」といった強かさに好感を持つ。
 
何にしても憧れの山「悪沢岳」の山頂まで来れた。
よかったよかった。
 

丸 山
 
  目の前の3000m峰「丸山」の大らかさに見とれ、間ノ岳方面に目をやった。
視界の左から右へ、スラーッと蝙蝠尾根が延びている。
美しい尾根に見とれながら「いつか歩いてみたいな」と思った。
たまたま山頂に居たオジサンにクッキーをいただく。
 
水筒にわずかに残っていた水を飲み干す。
1Lもあれば充分だと思っていたら見込みが甘かった。
オジサンの安全山行を願い、踵を返す。
  

蝙蝠尾根
 
コルに向かってひたすら下る。
すると、中岳への登り返しで極端にペースダウン。

迷わず中岳の避難小屋に立寄り、キリンレモンを所望する。
意外や、山で飲む炭酸水は美味しい♪
下界では、滅多に口にしないのにね。
 ザックの所まで戻ったら、横になって一休み。

その後、再び縦走路分岐点まで戻り、
そこからは、赤石岳方面に進み、荒川小屋を目指してカールを一気に下る。
素晴らしいお花畑が広がっているけど、見る時間が無い。
見る時間が無いけど、ついつい見てしまう♪(どっちやねん)

荒川岳カールのお花畑
 
途中タップリと水をくみ、夕方には営業中の荒川小屋に着いた。
 
屋外テーブルでレトルトのカレーライスをツマミにビールをやっていると、
一人で歩いて来たと云う親父さんが地図を広げて話しかけてきた。
 
小屋の中では、とある中高年の男女グループが我が家のような傍若無人振りで、
私も、他の「大方の良識ある中高年の皆さん」も迷惑を被った。
 
 
その夜は・・・
私の、高らかなヨーデル・イビキとダイナミックな寝返りに、
件のグループの皆さんも、小さくなって寝ておられたようだ。
  
 
   
 
 

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