平成14年7月 荒川三山〜赤石岳 【三日目】
 
 
周りが騒がしくなってきたので一緒に起きる。
着替えて荷物を背負ったら、小屋を出た。
 
外はまだ暗く、
小屋の前には、夜空を写真に撮っている若者達がいた。
 しばし彼らと話しをした後、日の出を撮影してから
出発する事にした。

夜明けが近付いてくる
 
空が白み、白峰南領の稜線に芙蓉の頂が浮かぶ。
何人かが、レンズを富士山に向けて日の出を待っているが、なかなか朝日は出て来ない。
非常に難産である。(苦笑)
 
時計を見ると、小屋を出て一時間が経とうとしている。
この先は樹林帯の登りなので展望は保証されず、日の出を見る事はかなわないかもしれないが
時間が勿体無いので出発する事とした。
 
と、樹林帯の坂を上がりきった場所で、あらぬ方向から朝日が現れた。
今日も宜しくと手を合わせ、大聖寺平目指して歩き始めた。
 

奥西河内沢の谷間と朝日
 
今日も、抑え気味にのんびり歩く。
左から奥西河内沢の水音が聞こえてくる。
 
 奥西河内沢の源頭は「大聖寺平」と呼ばれる開けた場所だ。
いくつかのガイドブックで写真を見ていたものの、本物はスケールが違う。
美しいハイマツの緑。
平面と曲線が作る、開けた源頭風景。
よくもまあ、これだけの物が自然にできたもの。
  

ハイマツと月

大聖寺平
 
赤石〜荒川の冬ルート直下は、ハイマツの密生する斜面。
その上空には、名残惜しそうに月が浮かんでいる。
冷たく新鮮な空気が体中に行き渡る頃、なだらかな丸い丘「ダマシ平」に辿りつく。
小屋を出てジャスト30分。
無用になった上着を脱ぐ為、ザックを下ろす。
 
水をなめなめ座っていると、細身の老人が歩いて来た。
「関西から来た。時間はあるので、マイペースで聖まで歩いて行く。」
などと話してきた。

麦わら帽子が似合う、話の好きなおじいさんであった。
この老人とは、付きつ離れつ赤石岳までご一緒する事となる。
 
  

ダマシ平
 
昨日歩いた「荒川岳」を振り返る。
前岳と中岳が大きい、山肌のひだも格好いい。
 お世話になった荒川小屋の「赤い屋根」が遠ざかっていく。
今回は自炊してしまったのでありつけなかったが、
いつか小屋の名物「荒川ラーメン」を食べに来よう。
 

荒川三山と荒川小屋
 
小赤石の肩を目指し、
少しずつゆっくりと高度を上げていく。
 
遠く山の尾根に、何やら「立派な建物」が見える。
「何だろう?」と目を凝らし、山肌の林道を見てピンときた。
「あぁ、南信のハイランドしらびそか。」
 
遠いイメージのある「南信」の建物が、意外と近くに見えたので不思議だった。
  

ハイランドしらびそ

小赤石岳へと続く3000mの稜線
 
小赤石岳の肩に出ると、なだらかな3000mの稜線歩きとなる。
登山道の脇は、ちょっとしたお花畑だった。

こんな厳しい環境でも、高山植物は可憐な花を咲かせている。

人は、境遇や環境によって、心を乱したり荒れる事があるけど、
高山植物は、平然とあるべき姿でそこにある。
物言わず、静かに穏やかに咲いている。
逞しく強かだ。
 

3000mのお花畑

奥西河内沢の切れ込み・雪渓
 
椹島への下り道、大蔵尾根が見下ろせるようになってきた。
ガスに煙って先が見えない、結構長い尾根だ。
尾根に乗るまでの斜面が、えらく急だ。
どう下っていくんだろう???

うーん・・・・・今日中に下れるのかしらん?(不安)
 

もうすぐ赤石岳

大倉尾根
 
小赤石岳に到着した。
降りかえった稜線を、先ほどのおじいさんが歩いてくる。
 
風景に溶け込み、とても絵になる。
一歩一歩を大地に馴染ませながら歩いてくる。
  

小赤石岳

おじいさん
 
いよいよ赤石岳への最後の登りが現れた。
何やら、十数名の集団が山頂に見える。
途中の道にも結構居るなぁ。
 
赤石岳への道と、椹島への道を分ける分岐点まで来た。
数人の登山者が座っており「荒川小屋で見た顔」もあった。

向こうもこっちに気付いたらしく、山頂の集団を指差して
「あいつらが居なくなるまで、ここで時間を潰しているんだ。」と声を掛けてきた。
あぁ、昨夜のあの人達か。(苦笑)
  

ライチョウ

ミステリーサークル
 
分岐にザックを置き、赤石岳山頂を往復する事にした。
 
登山道の先をライチョウの親子が横切る。
左の斜面に残る雪には、謎の円形が描かれていた。
自然のもの?誰かのイタズラ??
 
『360度の展望』と『乱立する山頂の看板』に驚けば、
そこが標高3120m赤石岳山頂だった。
 
山頂の下には、避難小屋が建っている。
百間平、聖岳などの展望を楽しんだ。
    

赤石岳山頂

山頂脇の避難小屋
 
山頂脇の瓦礫の隙間では、
ライチョウの親子が砂浴びをしていた。
親鳥が示すお手本を、雛鳥がじっと見ている。
ユーモラスで愛らしい仕草に、登山者達も夢中だ。

もっとゆっくりして居たかったけど、
帰りの都合もあるので山頂を後にする。
 
大倉尾根に赤石小屋の屋根が見えた。
「もう一泊したかったなぁ。」と心の中でボヤく。
  

ライチョウの砂浴び

赤石小屋
 
分岐からの下りは、注意を要する急勾配だ。
沢沿いに出たら、冷たい水で喉を潤す。
 
ポケットの中で潰れ、顆粒状になったクッキーを食べる。
美味い♪
 
まもなく道はトラバース道となる。
崩れ落ちている場所には橋が掛けられている。
曲がり角の向こうから、ガサゴソガサゴソと木の枝葉をかき分けるような音がする。

登山者かな?

すれ違うべく「広い場所」で待っていたけど誰もこない。
ならばと先へ進むと、誰も居ない(驚愕)
 
何だったんだろう?
 

北沢源頭

富士見平から見る赤石岳
 
小屋の手前の富士見平についた。
あいにく富士山は見えないけれど、赤石岳が屏風のように山裾を広げていた。
梅干を一粒食べて、一息ついたら出発する。
 
赤石小屋の前を通り過ぎ、椹島目指してグングン下る。
カラマツ?の落葉が斜面にたまり、ウェーディングシューズのフェルト底がよく滑る。
小屋を通り過ぎてからは、すれ違う登山者のほとんどが「あ・・・赤石小屋までどれくらいですか?」と尋ねてくる。
  
ある夫婦?は、旦那よりも奥さんの方が大きなザックを背負っていた。
「膝を痛めた」と苦悶の表情を浮かべて、遥か先の相棒を追う老人もいた。
みんな苦しそうだ、ガンバレガンバレ!
  

 
長い下りに疲れた頃、椹島の林道が見えた。
下り坂って疲れるんだね。
 
滑らないように気をつけていたから、余計に疲れたのかな?
あぁ疲れた。
本当に疲れた。
 
 

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