周りが騒がしくなってきたので一緒に起きる。 着替えて荷物を背負ったら、小屋を出た。 外はまだ暗く、 小屋の前には、夜空を写真に撮っている若者達がいた。 しばし彼らと話しをした後、日の出を撮影してから 出発する事にした。 |
夜明けが近付いてくる |
空が白み、白峰南領の稜線に芙蓉の頂が浮かぶ。 何人かが、レンズを富士山に向けて日の出を待っているが、なかなか朝日は出て来ない。 非常に難産である。(苦笑) 時計を見ると、小屋を出て一時間が経とうとしている。 この先は樹林帯の登りなので展望は保証されず、日の出を見る事はかなわないかもしれないが 時間が勿体無いので出発する事とした。 と、樹林帯の坂を上がりきった場所で、あらぬ方向から朝日が現れた。 今日も宜しくと手を合わせ、大聖寺平目指して歩き始めた。 |
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奥西河内沢の谷間と朝日 |
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今日も、抑え気味にのんびり歩く。 左から奥西河内沢の水音が聞こえてくる。 奥西河内沢の源頭は「大聖寺平」と呼ばれる開けた場所だ。 いくつかのガイドブックで写真を見ていたものの、本物はスケールが違う。 美しいハイマツの緑。 平面と曲線が作る、開けた源頭風景。 よくもまあ、これだけの物が自然にできたもの。 |
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ハイマツと月 |
大聖寺平 |
赤石〜荒川の冬ルート直下は、ハイマツの密生する斜面。 その上空には、名残惜しそうに月が浮かんでいる。 冷たく新鮮な空気が体中に行き渡る頃、なだらかな丸い丘「ダマシ平」に辿りつく。 小屋を出てジャスト30分。 無用になった上着を脱ぐ為、ザックを下ろす。 水をなめなめ座っていると、細身の老人が歩いて来た。 「関西から来た。時間はあるので、マイペースで聖まで歩いて行く。」 などと話してきた。 麦わら帽子が似合う、話の好きなおじいさんであった。 この老人とは、付きつ離れつ赤石岳までご一緒する事となる。 |
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ダマシ平 |
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昨日歩いた「荒川岳」を振り返る。 前岳と中岳が大きい、山肌のひだも格好いい。 お世話になった荒川小屋の「赤い屋根」が遠ざかっていく。 今回は自炊してしまったのでありつけなかったが、 いつか小屋の名物「荒川ラーメン」を食べに来よう。 |
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荒川三山と荒川小屋 |
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小赤石の肩を目指し、 少しずつゆっくりと高度を上げていく。 遠く山の尾根に、何やら「立派な建物」が見える。 「何だろう?」と目を凝らし、山肌の林道を見てピンときた。 「あぁ、南信のハイランドしらびそか。」 遠いイメージのある「南信」の建物が、意外と近くに見えたので不思議だった。 |
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ハイランドしらびそ |
小赤石岳へと続く3000mの稜線 |
小赤石岳の肩に出ると、なだらかな3000mの稜線歩きとなる。 登山道の脇は、ちょっとしたお花畑だった。 こんな厳しい環境でも、高山植物は可憐な花を咲かせている。 人は、境遇や環境によって、心を乱したり荒れる事があるけど、 高山植物は、平然とあるべき姿でそこにある。 物言わず、静かに穏やかに咲いている。 逞しく強かだ。 |
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3000mのお花畑 |
奥西河内沢の切れ込み・雪渓 |
椹島への下り道、大蔵尾根が見下ろせるようになってきた。 ガスに煙って先が見えない、結構長い尾根だ。 尾根に乗るまでの斜面が、えらく急だ。 どう下っていくんだろう??? うーん・・・・・今日中に下れるのかしらん?(不安) |
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もうすぐ赤石岳 |
大倉尾根 |
小赤石岳に到着した。 降りかえった稜線を、先ほどのおじいさんが歩いてくる。 風景に溶け込み、とても絵になる。 一歩一歩を大地に馴染ませながら歩いてくる。 |
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小赤石岳 |
おじいさん |
いよいよ赤石岳への最後の登りが現れた。 何やら、十数名の集団が山頂に見える。 途中の道にも結構居るなぁ。 赤石岳への道と、椹島への道を分ける分岐点まで来た。 数人の登山者が座っており「荒川小屋で見た顔」もあった。 向こうもこっちに気付いたらしく、山頂の集団を指差して 「あいつらが居なくなるまで、ここで時間を潰しているんだ。」と声を掛けてきた。 あぁ、昨夜のあの人達か。(苦笑) |
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ライチョウ |
ミステリーサークル |
分岐にザックを置き、赤石岳山頂を往復する事にした。 登山道の先をライチョウの親子が横切る。 左の斜面に残る雪には、謎の円形が描かれていた。 自然のもの?誰かのイタズラ?? 『360度の展望』と『乱立する山頂の看板』に驚けば、 そこが標高3120m赤石岳山頂だった。 山頂の下には、避難小屋が建っている。 百間平、聖岳などの展望を楽しんだ。 |
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赤石岳山頂 |
山頂脇の避難小屋 |
山頂脇の瓦礫の隙間では、 ライチョウの親子が砂浴びをしていた。 親鳥が示すお手本を、雛鳥がじっと見ている。 ユーモラスで愛らしい仕草に、登山者達も夢中だ。 もっとゆっくりして居たかったけど、 帰りの都合もあるので山頂を後にする。 大倉尾根に赤石小屋の屋根が見えた。 「もう一泊したかったなぁ。」と心の中でボヤく。 |
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ライチョウの砂浴び |
赤石小屋 |
分岐からの下りは、注意を要する急勾配だ。 沢沿いに出たら、冷たい水で喉を潤す。 ポケットの中で潰れ、顆粒状になったクッキーを食べる。 美味い♪ まもなく道はトラバース道となる。 崩れ落ちている場所には橋が掛けられている。 曲がり角の向こうから、ガサゴソガサゴソと木の枝葉をかき分けるような音がする。 登山者かな? すれ違うべく「広い場所」で待っていたけど誰もこない。 ならばと先へ進むと、誰も居ない(驚愕) 何だったんだろう? |
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北沢源頭 |
富士見平から見る赤石岳 |
小屋の手前の富士見平についた。 あいにく富士山は見えないけれど、赤石岳が屏風のように山裾を広げていた。 梅干を一粒食べて、一息ついたら出発する。 赤石小屋の前を通り過ぎ、椹島目指してグングン下る。 カラマツ?の落葉が斜面にたまり、ウェーディングシューズのフェルト底がよく滑る。 小屋を通り過ぎてからは、すれ違う登山者のほとんどが「あ・・・赤石小屋までどれくらいですか?」と尋ねてくる。 ある夫婦?は、旦那よりも奥さんの方が大きなザックを背負っていた。 「膝を痛めた」と苦悶の表情を浮かべて、遥か先の相棒を追う老人もいた。 みんな苦しそうだ、ガンバレガンバレ! |
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長い下りに疲れた頃、椹島の林道が見えた。 下り坂って疲れるんだね。 滑らないように気をつけていたから、余計に疲れたのかな? あぁ疲れた。 本当に疲れた。 |
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